2013/11/26(火)蒲生邸事件

「蒲生邸事件」宮部みゆき(文春文庫2000年)


 自分にとっての宮部みゆきといえば、映画「模倣犯」の原作者であり、「ICO」というゲームのノベライズ作家さんというぐらいの存在。

 その、唯一読んだ「ICO」がとにかくすごく自分に合ってない小説で、ゲームのノベライズなのになんでこんなにこうなのかとカンシャクを起こして、ちょっとしたトラウマ(本全般に拒絶反応)をしばらく抱え込んでしまったことがある。

 今作の蒲生邸事件は、随分前にテレビドラマで放送されたのを見る機会はあったのだけど、昭和初期を舞台にしたものということで、どうにも自分はこの年代の作品に対して「絶対につまらない」という先入観があって、すぐに見るのをやめてしまった。

 そんなわけで、文庫で670ページの今作は、トラウマになるのを承知の上で1日に100ページずつ計画的に読んでいった。

 なんでそこまでして読むのかといえば、ひとつは名作と言われていることと、ひとつは自分の読解力というか忍耐力がどこまで上がったのかを確かめるため、とかいろいろ。

 それで読後した今は、やはり冗長と感じてしまった。あと、妙に怒りっぽい人が多いことがあったり、主人公の孝史が平凡な庶民であることを押し貫いたことか。

 物語としては時間旅行というSF要素を巧みに使って、アガサクリスティを連想させられるようなミステリとをうまく組み合わせている。のだけど、どちらかといえばサスペンスドラマ寄りという印象。

 この時間を行き来できて歴史も改ざんできるのだけど、誰かを助ければ代わりに誰かが死ぬというSF設定があり、これに苦悩し、それぞれが確固たる信念で生きることを決意する様は読んでてすがすがしかった。でも長い。

 最後に主人公が一目惚れしたふきのことなんだけど、いまさらながらネタバレもないと思うのでツッコむと、ふきは蒲生の長男である貴之に仕えることに懸想しているようで、主人公のことは弟程度にしか思っておらず、最後に主人公がふきへの想いをつのらせる場面では共感しつつも、主人公の片想いとしか思えず、妙にしらけてしまったのも事実だった。

 おそらく昭和初期のことをしっかり調べられたのがうかがえて、水道水の金気臭を取るためにカメに水をためておくとか、デコボコして舗装されていない雪道や、パジャマにメリヤスなど、生活風景が丁寧に描写されていた。
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